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JDPP

  • はじめに
  • 我が国でも、食生活ライフスタイルの欧米化に伴い、糖尿病をはじめとする生活習慣病が急増している。2002年に実施された糖尿病の実態調査によると、糖尿病を強く疑われる人は740万人、糖尿病を否定できない人は880万人で、合計すると耐糖能異常者は1,620万人いると推定されている。最近、欧米では肥満を伴った耐糖能障害(IGT)者における大規模な介入試験が行われ、糖尿病の発症を有意に抑制することが示された。そこで、高度な肥満が比較的少ない日本人の文化や体質に合った糖尿病予防のエビデンスの確立が早急に望まれる。

    本稿では‘日本糖尿病予防プログラム(日本)’と題して、欧米での糖尿病予防研究と比較しながら、日本糖尿病予防プログラム(Japan Diabetes Prevention Program: JDPP)について概説したい。
  • 1.日本の糖尿病予防研究に求められるもの
  • 欧米でのIGT者に対する大規模な介入研究により、生活習慣介入が2型糖尿病予防に効果的であることが明らかになった。米国のDPP(Diabetes Prevention Program)では‘低脂肪食(1,200-1,800kcalの低エネルギーで脂肪割合25%未満)と1週間に150分以上の運動をすることで体重を7%低下させる’ことを目的に、(1)生活習慣の積極的な改善を行う生活習慣介入群、(2)メトホルミン(850mg錠)の1日2錠投与(開始時の1週間は1日1錠投与)により薬物療法を行うメトホルミン群、(3)食事や運動に関する一般的なアドバイスのほかはプラセボを投与される対照群の3群に無作為に割り付けられた。3年間における糖尿病の累積発症率は、対照群では29%であったのに対し、メトホルミン群で22%、生活習慣介入群で14%であった。糖尿病発症抑制率は生活習慣介入群で実に58%という結果が得られた(※1)。

    フィンランドで行われたDPS(Diabetes Prevention Study)でも糖尿病発症抑制率はやはり58%であった。これら欧米での研究から肥満を伴ったIGT者に対して、積極的に生活習慣介入することで糖尿病の一時予防が可能であることが示された(※2,3)。しかしながら、いずれの研究も対象が中等度以上の肥満者である(表1)。肥満が高度でなく、インスリン分泌能が少ない日本人IGT者に対しても生活習慣介入は有効であるだろうか。

    欧米の糖尿病予防研究との比較

    また、DPPでは生活習慣介入は、最初の24週間は専属のライフスタイルコーチが食事・運動・行動修正に関して16回のセッションをもち、介入目標の達成を目指した。このコアカリキュラムの前半は食事と運動に関する基本的な知識と自己管理の技術が盛り込まれている。後半はより行動科学的な技術の習得を目標としている。このライフスタイルコーチは主に栄養士で、1人のコーチが20人を担当し、参加者と頻回に接触する。コーチ同士も1年ごとにどのような活動をしているかの確認も行う。その後は維持期として毎月個別ないし集団で面談あるいは電話(e-mailも含む)で行動変容を強化した。DPPでは年間1参加者について100ドルが用意されている。これも行動科学的手法の報酬に当たる。これを考えるとかなりの費用と労力を使った介入であることがうかがえる。欧米と日本では保健医療システムが異なる。既存の保健医療サービスを用いて、対費用効果の高い介入は可能であるだろうか。
  • 2.日本における糖尿病予防のアウトカム研究
  • JDPP(葛谷班)は、正常体重者も含めた日本人IGH者を対象に‘生活習慣を改善することにより糖尿病を予防できるのか?’、‘どのように介入すれば生活習慣を改善できるのか?’について検証している多施設協同による無作為割付試験である(図1)。

    日本糖尿病予防プログラムの流れ

    地域、職域の健診、人間ドックなどの一次スクリーニングでは、30-60歳の年齢、空腹時血糖値が100mg/dl以上で126mg/dl未満、随時血糖値(食後2時間を越える)が110mg/dl以上で140mg/dl未満、HbA1c値6%未満(除外診断)などの基準と、胃切除者、腎不全など運動禁忌の疾患、既に相当量の運動を習慣的に行っている者は除外規定により行われている。全国32協力施設の分布を示す(図2)。

    全国32協力施設の分布

    約1,000人に対して、二次スクリーニングとして75gブドウ糖負荷試験が行われた。IGTと糖尿病をスクリーニングするカットオフポイントは空腹時血糖値105mg/dl、HbA1c値は5.3%であった(※4)。年齢別参加人数の割合をみると、50歳代の参加者が多い。対象者のBMI別人数の割合をみると、19.8-24.1kg/m²が最も多い(図3)。

    対象者のBMI別人数の割合

    年齢、性、BML、血糖値で無作為化、普通介入群と強力介入群の2群に分けた。既存の保健サービスを用いた生活習慣介入は欧米の介入研究と比べると弱い。保健師と栄養士による最初の6ヵ月間を強力介入期とする生活習慣介入プログラムを実施し、その後は3ヵ月に1回の維持期と位置付ける。介入目標は、(1)適正な体重(BMI22kg/m²)の達成、過体重者・肥満者にあっては5%の減量、(2)運動の習慣獲得、(3)それらを継続させることである。主評価項目は糖尿病の発症予防、副評価項目として耐糖能の改善、体重の適正化、運動習慣など行動変容、他の危険因子の改善(高脂血症、高血圧症)、高インスリン血症の改善、QOLの改善などをあげている。

    そのほかに糖尿病に関する遺伝子解析や医療経済学的な検討も併せて行われている。ベースライン調査としては、生活習慣調査、肥満意識調査、身体活動調査、食物摂取頻度調査、家族歴、職業・学歴、身体組織、血液・尿検査などを行っている、欧米の介入研究では食事調査は3日間の食事記録で行われているが、JDPPでは料理別栄養成分表を利用した食物摂取頻度調査を用いており、四季のある日本での食事調査に向いていると考えられる。
  • 3.具体的な生活習慣介入方法は?
  • 両群に対して、第1回糖尿病予防教室は‘糖尿病とは、耐糖能以上とは、糖尿病の発症を防ぐには’と題して、協力施設の保健師によりスライドないしビデオを用いた教育が行われる。普通介入群は、その後は経過観察のみでフォローされる。これは従来の健康診断の事後指導とほぼ同じ介入プログラムである。それに対して、協力介入群は、第2回糖尿病予防教室‘糖尿病予防のための食事’、個別面接、第3回糖尿病予防教室‘運動教室(1)スポーツ障害をおこさないために’、第4回糖尿病予防教室‘運動教室(2)楽しく運動しよう’の介入が行われ、その後3年まで3ヵ月に1回の個別面談または集団指導でフォローアップされている。食事介入は、目標達成のため、食習慣に関して問題点を指摘し、その改善を図る。また、食事のモニターのため、食事記録入力ソフト‘食事さん’を用いている。運動介入は余暇時間における運動量を一定量増やす方法で介入を行う。運動負荷量は1日160kcalとする。歩行を原則とするが、他の運動も交換可能な運動として加える。運動記録として歩数記録表を用いる。運動持続時間としては、20分以上継続することとし、週4回以上行うようにする。生活習慣改善度を5段階で自己採点される。‘運動する時間がない’などの参加者の興味を引く項目に対して、ファックス通信による学習が行われる。調査や介入の標準化、および保健医療従事者のトレーニング、栄養・運動・行動修正療法に関する学習、介入に必要な教材、カウンセリングの力量研磨、創造的なアイデアの情報交換の場としてスキルアップのための研修会が保健医療従事者に対して年に1度、組まれている。
  • 4.2年目における中間解析
  • 2年目を過ぎた194人による解析では、体重、BMI、糖負荷後2時間血糖値、空腹時および糖負荷後2時間インスリン値については普通介入群と強力介入群の両群で介入2年後には有意に低下している。普通介入群では総摂取エネルギーと脂質割合に有意な変化はみられなかったが、強力介入群では介入後に有意に低下した(図4)。

    総摂取エネルギーと脂質割合の変化

    総消費エネルギーは普通介入群では有意な変化はなかったが、強力介入群では有意な増加がみられた。その結果、普通介入群では0.9kg(-1.4%)の減量がみられたのに対し、強力介入群では1.6kg(-2.7%)の有意な減量効果がみられた。特に、強力介入群では拡張期血圧と腹囲の有意な低下がみられた(図5)。

    血圧と腹囲の変化

    これは内臓脂肪の減少効果をうかがわせる。HDL-コレステロール値は両群で介入後に有意に増加したγ-GTPについては、普通介入群では不変であったが、強力介入群でのみ有意に低下した。普通介入群ではHbA1cの有意な増加がみられたが、強力介入群では不変であった。その結果、2年間の糖尿病型への移行率は普通介入群に対して強力介入群ではほぼ半減した。今後は、糖尿病予防に関する遺伝子解析や対費用効果の検討も含め検討していきたい。
  • おわりに
  • DPPの結果を受けて、米国の糖尿病対策は糖尿病の合併症の予防を主眼に置いた医療機関と州の保健行政が協力して糖尿病医療水準の向上を図るシステムズアプローチから合併症の予防と並行して糖尿病の一次予防という新しい目標が加えられ、医療機関のみならず、国民の生活習慣に影響のある地域団体を介しての啓発を行うコミュニティーアプローチが導入されることとなった。日本においても科学的根拠に基づいた糖尿病予防の方法論の確立と効果的なシステム作りが望まれる。
  • ■文献
    ※1・・・Tuomilehto J. et al: Prevention of type 2 diabetes mellitus by changes in lifestyle among subjects with impaired glucose tolerance. N Engl J Med 344: 1343-1350, 2001.
    ※2・・・Lindstorm J, et al: The Finnish Diabetes Prevention Study(DPS): Lifestyle intervention and 3-year results on diet and physical activity. Diabetes Care 26: 3230-3236, 2003.
    ※3・・・Knowler WC, et al: Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med 346: 393-403, 2002.
    ※4・・・Gomyo M, et al: Effects of sex, age and BMI on screening tests for impaired glucose tolerance. Diabetes Res Clin Pract 64: 129-136, 2004.
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